小倉のぬか炊きでよく使われる魚といえば、サバとイワシです。報告書でも、小倉が響灘・周防灘・関門海峡の三方を海に囲まれ、サバやイワシなどの青魚が豊富に獲れたことが、ぬか炊きの食文化が生まれた要因の一つとされています。 どちらも青魚ですが、食べたときの印象は同じではありません。
サバのぬか炊き
サバは身に厚みがあり、脂の旨みを感じやすい魚です。ぬか床と炊くことで、身の旨み、脂、発酵香が重なり、満足感のある一皿になります。 ご飯のおかずとして食べると、煮汁の塩味と魚の脂がよく合います。初めてでも「魚を食べた」という実感を得やすいのがサバです。
報告書の成分調査では、ぬか炊きの分析対象としてサバが使われています。味処矢野のサバのぬか炊きでは、魚本体と煮汁の合計値として、ビタミンB1、ビタミンB6、マグネシウム、遊離GABAが確認されています。 ただし、これらの数値は特定の健康効果を示すものではなく、料理に含まれる成分を把握するための調査結果として受け止める必要があります。
イワシのぬか炊き
イワシは、サバに比べると小ぶりで、身と煮汁の一体感を楽しみやすい魚です。 ぬか床の香りが魚全体に回り、ひと口ごとに発酵の風味を感じやすいのが特徴です。脂の強さだけで食べるというより、ぬか床の香りと魚の旨みを細かく味わう印象があります。
ぬか炊きを初めて食べる方で、重たすぎる味を避けたい場合は、イワシから試すのもよい選び方です。 ご飯に少しずつ合わせると、見た目よりも食べ進めやすく感じる方も多いはずです。
どちらを選ぶか
しっかり魚の身を味わいたいならサバ、ぬか床の香りや煮汁とのなじみを試したいならイワシ。 このように考えると選びやすくなります。朝食やランチではご飯のおかずとして、夜は日本酒や一品料理と合わせて、同じぬか炊きでも食べ方が変わります。
青魚とぬか床の関係
青魚には脂と旨みがあります。その一方で、香りに個性があり、苦手意識を持つ方もいます。 小倉のぬか床には唐辛子や山椒が入るのが特徴とされ、発酵香と香辛料が青魚の個性を包み込みます。 ぬか炊きは、青魚を隠す料理ではなく、青魚を小倉の味として食べるための料理です。
食べ比べる楽しさ
ぬか炊きに慣れてきたら、サバとイワシを別の日に食べ比べるのもおすすめです。 同じ矢野式糠床でも、魚の身質や脂の違いによって、香りの立ち方や煮汁の印象が変わります。 小倉の郷土料理を深く知る入口として、サバとイワシの違いを楽しんでみてください。
出典:北九州市「北九州市の郷土料理『ぬか炊き』の食文化価値の再発見事業 調査報告書」(令和7年3月、文化庁 令和6年度「食文化ストーリー」創出・発信モデル事業)