NUKADAKI GUIDE

100年フードとしてのぬか炊き

文化庁100年フード認定、市民調査、家庭のぬか床をめぐる現状から食文化の継承を考えます。

ぬか炊きは、文化庁の「100年フード」に認定されている北九州市の郷土料理です。 農林水産省「うちの郷土料理」にも掲載されており、地域で受け継がれてきた食文化として位置づけられています。 100年フードとして考えるとき、ぬか炊きは単に昔からある料理ではなく、これからも食べ続けられる形で残していく料理です。

市民に知られている料理

報告書の市政モニター調査では、「北九州市の食といえば何を思い浮かべるか」という回答で、ぬか炊きが46.2%で最も多く、2位の焼うどんは32.1%でした。 また、ぬか炊きが北九州市の郷土料理であることを「知っている」と答えた人は97.4%、ぬか炊きを「食べたことがある」と答えた人は87.2%でした。 この結果から、ぬか炊きは地元で強く認知されている料理だとわかります。

一方で、食べる機会は減りやすい

知られていることと、日常的に食べられていることは同じではありません。 報告書では、未喫食者の理由として「食べる機会がなかった」「見た目に抵抗がある」「においが気になる」などが挙げられています。 さらに、ぬか床の保有率は低く、手入れの大変さから保有をやめた人が増えていることも示されています。

ぬか炊きは、家庭のぬか床と結びついてきた料理です。ぬか床を持つ家庭が減れば、家庭でぬか炊きを作る機会も減りやすくなります。 だからこそ、飲食店で食べられる状態を保つことが、文化を次につなぐ一つの役割になります。

長く続くぬか床の記憶

報告書のヒアリングでは、ぬか床を60年以上、20年以上保有している家庭が確認されています。 具体的な年数を競うための情報ではなく、ぬか床が世代をまたいで守られることのある食文化だと示す事実です。 毎日の手入れ、家庭ごとの香り、魚を炊くときの加減。ぬか炊きには、レシピだけでは残しにくい経験が含まれています。

店が担う役割

味処矢野 京町店では、矢野式糠床を使ったぬか炊きを、朝食、ランチ、夜の居酒屋で提供しています。 醤油・酒・味醂・白砂糖を加えない完全無添加の製法は、報告書の分類に照らすと伝統式にあたります。 家庭でぬか床を持たない人や、観光・出張で小倉を訪れる人にも、ぬか炊きを食べる機会を作ることができます。

地域全体の食文化として

ぬか炊きを伝えるとき、特定の店だけを前に出しすぎるのは適切ではありません。 報告書の成分調査も、市内のぬか炊き専門店を対象にした地域全体の食文化調査です。 ぬか炊きそのものが北九州市の郷土料理として価値を持ち、その中で各店や各家庭が違う味を守っていると考えるべきです。

100年先に残すために

100年フードとしてのぬか炊きに必要なのは、名前を知っている人を増やすことだけではありません。 実際に食べる機会、初めての人にもわかる説明、作り手の継続が必要です。 味処矢野 京町店では、小倉駅近くの京町で、朝・昼・夜にぬか炊きを味わえる場所として、この郷土料理を次の世代へつなげていきます。

出典:北九州市「北九州市の郷土料理『ぬか炊き』の食文化価値の再発見事業 調査報告書」(令和7年3月、文化庁 令和6年度「食文化ストーリー」創出・発信モデル事業)